幼児期の友達関係 親がしてあげられる事、してはいけない事:研究に基づくサポート術

子育て

うち上の娘(4歳)保育園で大好きなお友だちがいるんです。
でも新しい年度でクラスが変わって、今は別々のクラスに。
娘はまだ「○○ちゃん大好き」その子のクラスに遊びに行くんだけど、
なんだか最近、相手の反応がそっけない気がすると妻が…。

こういうとき、親ってどうすればいいんだろう?
無理に引き止めようとするのも違う気がするし。まあ、出来ないし…。
かといって放っておくのも不安だし。

幼児の友情って、かわいくて微笑ましいけど、実はけっこう繊細。
この記事では、そんな “ちいさな友情” に親がどう関わればいいか
世界の専門家や研究からヒントを集めてまとめてみました。
悩んだときの参考になればうれしいです。

幼児期の友情の意義と発達

「一緒に遊ぶと楽しい!」がスタート地点

幼児にとっての友情って、まだまだシンプルなものです。
「一緒に遊んで楽しかった」「おもちゃを貸してくれた」「笑ってくれた」
それだけで、「この子が好き!」になる。とっても純粋で、ストレートですよね。

でも実は、この “ただ楽しい” という気持ちは、子どもにとってすごく大事な心の土台。
「友だちと遊ぶって楽しい」という経験を通じて、

  • 相手の気持ちを想像する力(共感力)
  • 順番を待つ、貸し借りをするなどの社会的スキル
  • トラブルが起きたときの感情のコントロール

など、先の人生にずっと役立つスキルが少しずつ育っていきます。

研究によると、4〜5歳の子どもは「特別なお友だち(best friend)」という感覚を持ち始める子も増え、友情に深みが出てくるタイミングです(Denham et al., 2003)。
とはいえ、この時期の友情はまだ不安定で、関係が続くかどうかは環境や相手の気分に左右されやすいんです。

だからこそ、親としては「どうしてうまくいかないの?」と心配しすぎず
「子どもが人間関係を練習している時期」と見守るスタンスがとても大切になってきます。

幼児期の友情の意義

「ただの遊び」が、一生モノの力になる

子ども同士が仲良く遊んでいるのを見て、「ほほえましいな〜」と思うこと、ありますよね。
でも実はこの“遊び”が、将来の人間関係や心の健康にまで影響を与えているって、ご存じですか?

心理学者グウェン・デュワー博士(Gwen Dewar)は、友情の経験が子どもの自己肯定感ストレス耐性、そして共感力の土台になると説明しています。

そして幼児期に良好な友情関係を経験した子は、その後の学校生活や職場、家庭などでもより豊かで安定した人間関係を築きやすい、という研究結果も出ています(Hartup, 1996)。

さらに、仲間と一緒に遊びながら学ぶ「対話」「交渉」「感情の調整」などのスキルは、まさに社会生活に不可欠な“非認知能力”。
勉強よりも先に育っていく、人生の土台みたいなものなんですね。

ただ楽しいだけじゃない、深いメリット

子どもにとって「仲のいい友だちがいる」というのは、思っている以上に大きな意味があります。

メリットを具体的にあげると

  • 自尊心を高める
     →「私は大切にされてる」と感じる経験が、自信の土台に。
  • 学業成績を支える
     →良い人間関係があると、学校での不安が減り、集中しやすくなる。
  • 孤独感を和らげる
     →一緒に笑える相手がいると、ストレスが減って心が安定。
  • うつや不安のリスクを下げる
     →特に思春期以降のメンタルヘルスに大きく影響するという研究も(Bagwell et al., 1998)。

ただの遊びに見えて、実は一生ものの力を育てている――。
そんなふうに子どもの友情を見てみると、親としてできることや見守り方も変わってくるかもしれませんね。

どういう子が友達に好かれるか

では、どんな子が「友だちに好かれる子」になっていくんでしょう?

グウェン・デュワー博士によると、友達を作る・維持する可能性が高い子には、ある共通点があります。

  • 快活で明るい(話しかけやすい!)
  • 協力的で優しい(一緒にいて気持ちいい)
  • 自制心がある(わがままになりすぎない)
  • 他人の気持ちを考えられる(共感できる)

つまり、「思いやり」と「自己コントロール」のバランスが取れている子は、自然と周りに友だちが集まりやすいんですね。

さらにデュワー博士は、「子どもは、親切で協力的で親身になってくれるような子を友だちに選びやすい」とも述べています。
これは大人と同じで、やっぱり“自分を大切にしてくれる人”に心を開きやすいということ。

親が出来るサポート(してあげられる事)

今回みたいな、揺らいだ友情の維持に対して僕たちは何ができるのでしょうか?

子どもが友達を作るのは自然な成長の一部です、しかしその関係を続けていく力はまた別のスキルです。
アイリーン・ケネディ・ムーア博士は、「友情は才能ではなくスキル。だからこそ、親のサポートが大きな意味を持つ」と語っています。

ここでは、友情を“築く”ことと“維持する”こと、それぞれに必要なスキルと、親にできる具体的なサポートについて見ていきます。

つくるスキルで親がサポートできること

社会的な場を用意する(例:プレイデート)

子ども同士の自然な関わりを増やすには、まず環境づくりが大切です。
プレイデートや公園などの「自由な遊び」の場は、子どもが協力・共有・順番を学ぶ機会になります。

研究:
スタンフォード大学付属Bing Nursery Schoolの調査では、プレイデートは社会的スキルの発達に有効であることが示されています。
出典:Bing School – Stanford

初対面の不安を和らげる

シャイな子や内気な子は、最初の一歩が踏み出せないことも。
そんなときは、「一緒にやる遊び」や「共通の話題」を準備してあげるとよいでしょう。

例えば:

  • 新しい場所で遊ぶ前に「ここにはどんなおもちゃがあるか」教えてあげる
  • 相手の好きなキャラクターを話題にする etc.

気持ちを言葉にする手助け(感情ラベリング)

子どもが「楽しい」「緊張した」「もやもやする」といった気持ちを言葉にできると、自分から関係を築く力にもつながります。

親が「今、ドキドキしてるのかな?」「そのとき悲しかったね」と声をかけることで、子どもは感情を整理しやすくなります。

維持するスキルで親がサポートできること

“待つ力”を育てる

子どもの友情には、一時的に離れたり、気持ちがずれたりする期間もあります。
でもそれは「友情の終わり」ではなく、“時間を置く”ことも必要なスキル。

ムーア博士は、こうした待つ力や、相手の気持ちを尊重する力も「友情の維持に欠かせない」と述べています。

順番を守る「方法」を教える

相手に思いやりや共感を示すことで、良好な人間関係を維持することが出来ます。

子どもと遊ぶ時間を利用して、子どもに全てを決めさせるのではなく
”お互いのやりたい事” を意識させて順番を守る方法を学ばせましょう。

例えば:

子どもが「ぬいぐるみで遊びたい」と言ったら「パパは絵本を読みたいな」
提案する。

子どもたちがこういった場面になれることで、友達に対しても同じように振舞えるようになります。


参考文献:

感情のコントロールを手伝う

友情がこじれる原因のひとつに、「怒り」や「悲しみ」をうまく伝えられないことがあります。

親は「怒ったときに深呼吸しよう」「悲しかったね。でもまた会えるよ」と気持ちの調整方法を一緒に練習していくことができます。

相手の立場になって考えるよう促す(共通スキル)

「もし自分が〇〇ちゃんだったら、どう思うかな?」と声をかけてみましょう。

子どもが友情を築き、長く良い関係を保つためには、「相手の立場で考える力(視点取得/perspective-taking)」がとても大切です。

相手の立場を考える練習をすることで、子どもは少しずつ他人の感情や考えを想像する力を育てていけます。

こうした視点取得の力を持つ子どもは、友達ができやすく、信頼関係を維持しやすいことが、オランダの発達心理学研究でも示されています。

Güroğluら(2014)の研究では、視点取得力のある子ほど、より公平で思いやりのある行動を選びやすく、対人関係において好まれる傾向があるとされています。

🔗 出典:Güroğlu et al. (2014). Development of fairness considerations in children’s behavior.

親が避けるべき関与(してはいけない事)

子どもが友達関係で悩んだり、うまくいかない時、親としてはなんとか力になりたいと思うものです。
でも実は、「よかれと思った関わり」が子どもの自立や友情の発達を妨げてしまうこともあります。

ここでは、研究に基づいた「親が避けるべき関わり方」を3つ紹介します。

過度な介入や口出し

どんな関わりが「過度」になるのか?

例えば:

  • 子ども同士のちょっとしたトラブルに毎回大人が入って解決してしまう
  • 誰と遊ぶかを親が決めたり、無理に一緒に遊ばせようとする
  • 子どもが傷ついた時にすぐに相手の親に連絡してしまう

「子どもが困っているから助けてあげたい」と思う親心は自然なものです。
でも、子ども同士の人間関係に過度に介入しすぎると、かえって自律性や対人スキルの発達を妨げてしまうという研究結果もあります。

2歳時点での過干渉な育児が、5歳時点での感情調整力(emotion regulation)および抑制制御(inhibitory control)の低下と関連し、さらに10歳時点での社会的スキルや学業成果の低下、感情的および学校での問題の増加と関連していることが示されました。

🔗 出典:PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29911876/

指示や誘導で“理想の友達関係”を押しつける

「仲良くしなさい」は逆効果?

「この子と遊びなさい」「けんかはダメでしょ」などの善悪や仲良しの押しつけは、子どもにとってプレッシャーになります。
また、「自分で考えていいんだ」という自律的な判断力を育てにくくなります。

子どもにとって、親や先生に言われて一緒に遊ぶ相手と、自分の意思で選んだ友達とでは、その関係の深さや学びに大きな違いがあります。

心理学者ハートアップ(Hartup, 1996)は、「子どもが自ら選んだ友情関係のほうが、社会的スキルや感情の調整力の発達に強くつながる」と述べています。

自分で関係を築く経験を通じて、子どもは相手との駆け引き・衝突の調整・共感の持ち方などを自然に学んでいくのです。

他の子と比較したり、評価でプレッシャーをかける

「〇〇ちゃんはできてるのに」はNG

子どもは他人と比べられると、自信をなくしたり、嫉妬や不信感を抱くことがあります。
「〇〇ちゃんともっと仲良くしなさい」は、子ども自身の気持ちを無視してしまうメッセージになりかねません。

「すごいね!〇〇ちゃんより上手だね」「もっと頑張れば、○○ちゃんみたいにできるよ」
こんな言葉、つい言ってしまいがちですが、外からの評価や比較によるプレッシャーは、子どもの自己肯定感や社会的行動にマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。

自己決定理論(Self-Determination Theory)を提唱したDeci & Ryan(1985)は、人は本来、内発的な動機(=自分の意志でやりたいという気持ち)によって最も健全に成長すると述べています。

外的な評価や報酬で動機づけられた子どもは、やる気を一時的に出すことはできても、本来の興味や内発的な学び・関係構築の力が弱まってしまう可能性があるのです。

🔗 出典:Deci & Ryan (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior

まとめ:見守ることのできる親である為

「子どもの傷つく姿を見たくない。」親であればだれしもそう思います。

しかし、子どもたちは友情に喜び傷つくことで、人生に必要なスキルを学んでいるんです。

時に難しいと感じることがありますが

後ろで見守り、導くことが親の役割かも知れません。

そして親はどっしりと構えて、安心感を与える存在であることが何より重要

子どもたちは大丈夫。信じて見守りましょう!

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