自然保育とは 子どもの創造性と生きる力を育む教育

自然保育とは、森や山などの自然環境を教室とし、五感をフルに使った体験活動を重視する保育・教育活動です。特に幼児期の子どもを対象とし、「森のようちえん」などの形で広まっています。
特徴と目的
では、自然保育では何を大切に考え、子供たちに何を与えようとしているのでしょう?
非構造的な環境と創造性の育成
明確な遊び道具や大人の指示が少ない環境を特徴とします。子どもたちは、落ちている小枝、石、葉などの自然素材を自ら遊びの道具に見立てることで、創造性、問題解決能力、そして物事を多角的に見る認知の柔軟性を高度に育みます。
主体性と自己調整力の向上
活動が子ども主導で行われるため、遊びのルール作りや危険の判断を自ら行い、主体性や自己調整能力が最も鍛えられます。自由な遊びと自然との触れ合いは、情緒的な基盤を築き、幸福度(ウェルビーイング)の向上にも優位性があります。
ボーイスカウトなどとはどう違うの?

子供たちが自然の中で行う活動として思い浮かぶのが “ボーイスカウト活動” です。
“自然保育” と “ボーイスカウト” では、どんなところが違うのでしょうか?
ボーイスカウト等との違い
ボーイスカウトなどが規律、実用的なスキル、リーダーシップを系統的に高めるのに対し、自然保育は創造性と情緒的な発達に特に強みがあります。
子どもの総合的な成長のためには、幼少期に自然保育で心の基盤と創造性を育み、学童期以降にボーイスカウトなどで社会性や実用的なスキルを鍛えるなど、両者のメリットを享受できる環境を与えることが理想的とされます。
自然保育(森のようちえんなど)が優位な点
自然保育は、創造的で情緒的な発達に特に強い優位性があります。
- 創造性と認知の柔軟性: 予測不能な自然の中で、遊びの道具をゼロから作り出すため、創造性、問題解決能力、認知の柔軟性(物事を多角的に見る力)が高度に育まれます。
- 情緒的ウェルビーイング(幸福度): 自由な遊びと自然との触れ合いは、ストレスを大幅に軽減し、自己肯定感や感情の安定といった情緒的な基盤を築くのに優位です。
- 主体性: 大人の指示が少ないため、自分で考えて行動する主体性が最も鍛えられます。
ボーイスカウトなどが優位な点
ボーイスカウトなどの活動は、社会的スキルと実用的な能力に特に強い優位性があります。
- 規律とリーダーシップ: チームで目標を達成するための規律、計画性、責任感、そして年長者として指導するリーダーシップを系統的に学ぶ環境があります。
- 実用的なスキル: 火起こし、救急法、ナビゲーションなど、実生活やサバイバルに必要な実用的なスキルを、明確なカリキュラムと評価(バッジ)に基づいて効率的に習得できます。
- 目標達成能力: 明確な進級目標があるため、努力と計画を通じた目標達成の喜びを経験できます。
自然保育にはどんなものがあるの?3つの選択肢

自然保育といっても、運営団体によって様々なスタイルがあります。
その中で、幼児の情操教育 という面に絞ってどんな選択肢があるのかをみてみましょう。
① 認可外の「自然保育団体」
親子参加型の自然保育団体(野外自主保育サークル)とは、保育者ではなく“親自身”が運営主体となり、自然の中で子どもと一緒に過ごす活動スタイルです。森や公園での外遊びを中心に、季節の変化や自然素材に触れながら、幼児の情操教育や主体性を育みます。スタッフが常駐しないことも多く、保護者同士の協力が重要。幼児期に「自然の中でのびのび育てたい」と願う家庭に人気の活動形態です。
子供の情操教育という面では、こちらが一番効果的でしょう。
- 自由遊び中心
- 自然環境の変化にあわせたカリキュラム
- 大人が“見守る”姿勢で、子どもの主体性を育てやすい
- 小集団で子どもの情緒に寄り添いやすい
どんな親に向いている?
「親も一緒になって、子供の環境を整えたい」「自然の中でのびのび過ごさせたい」「五感を育てたい」家庭。
② 認可園の中でも「自然保育方針の強い園」
預かり型の自然保育は、保育者やスタッフが子どもを預かり、日常的に森や公園などの自然環境で過ごす保育スタイルです。季節の変化や自然素材を教材として取り入れ、五感を育てる体験を重視。集団生活の基礎を学びながら、主体性・冒険心・創造力を伸ばします。園として運営されているため、カリキュラムや安全体制が整っており、家庭の働き方に合わせて通えるのが特徴です。
- 毎日の自然散策、自然遊び
- 恒常的なお友達関係の構築
- 畑や田んぼなどの農業活動
- 保育士による専門的な保育
「安定した保育園 × 自然の経験」がセットになるので、家庭の負担は少ないです。
向いている家庭
フルタイムで安定した預け先が必要、でもできるだけ自然に触れさせたい。
③ 自然学校・NPOの少人数プログラム(親子参加系)
NPOが行う自然保育や自然活動は、目的や運営体制によってとても多様です。幼児の情操教育を重視する家庭から、冒険体験を求める小学生まで、それぞれのニーズに合わせて選べるのがNPOによる自然活動の魅力です。
- 参加の自由度の高さ
- 非日常的な“感動の経験”を親子で共有できる
- 大人が「共感的」に関わるため、情緒が開きやすい
毎週ではなくても、定期参加で情操面に効果が出やすい。
向いている家庭
普段通っている園での生活と両立させて、自然体験の補完をしたい。
自然保育のメリット • デメリット
自然の中でのびのびと遊ぶ自然保育は、子どもの成長に多くの良い影響を与える一方で、家庭や園の運営面では課題も存在します。自然保育を選ぶ際は、メリットとデメリットの両方を知り、家庭に合う形を見極めることが大切です。
自然保育のメリット(良い点)

1. 探究心・科学的思考が育つ
自然には「なんで?」「どうして?」があふれています。
虫や植物、季節の変化などへの興味から、理科的な知識や探究心が自然と育ちます。
2. 自然の美しさを感じる豊かな感性
四季の移ろいや風、光、緑の心地よさが、子どもの感性を耕します。
美しいと感じられることは情緒の安定にもつながります。
3. 精神が安定し、ストレスが軽減
自然の中にはリラックス効果があり、不安やストレスが減少。
情緒が安定しやすく、気持ちの切り替えもスムーズになります。
4. 思考力・問題解決力が育まれる
遊びの中で「どうしよう?」に出会い、試しながら解決する経験が豊富。
考える力・判断力・問題解決力がバランスよく育ちます。
5. 想像力・創造力が豊かになる
枝・石・葉など、決まった形のない素材で遊ぶことで、柔軟な発想力が育ちます。
6. 命への責任感や思いやりが生まれる
生き物との出会いや、野菜づくり、食育体験を通して、
「命を大切にする気持ち」や「責任感」が育まれます。
7. 五感と基礎体力が総合的に発達
デコボコ道を歩いたり、木登りをしたり、風や匂いを感じたり…
全身の感覚が刺激され、体力・バランス感覚が自然に鍛えられます。
8. 協力・コミュニケーション力が身につく
自然遊びは友だちとの協力を生みやすく、意思決定や役割分担などの社会性が育ちます。
9. 自己肯定感・自信・自立心が育つ
遊びを自分でつくる経験は「できた!」につながり、
自己肯定感や自信、自立心の土台になります。
10. デジタル依存を防ぎ、生活リズムが整う
画面に触れる時間が減るため、デジタル依存になりにくく、
よく動くことで睡眠や食欲も安定しやすくなります。
11. 価値観の合う家庭と出会いやすい
自然保育を選ぶ家庭は考え方が似ているため、コミュニティが育ちやすい側面もあります。
自然保育は、子どもの非認知能力・感性・体力・自立心などを育てる非常に豊かな教育方法です。
様々な研究などから、自然保育によるメリットは裏付けられています。
自然保育のデメリット(気をつけたい点)

1. 小学校の集団生活に馴染めるか不安
自由度が高い分、座って話を聞く • 一斉行動 などの学校的ルールに慣れにくいのでは…と心配する声があります。
2. 天候によって活動が左右される
暑さ・寒さ・雨・風など、天候に強く影響を受けます。
服装や荷物の準備は、親の負担になりがちです。
3. 安全面の管理が難しい
自然ならではの、ケガ • 虫刺され • アレルギー などのリスクがあり、保育者の判断と見守りが非常に重要です。
4. 自然が苦手な子には負担になる場合も
土や虫が苦手、暑さ寒さが苦手な子は、ストレスを感じる場面も多くなるでしょう。
5. 親の負担が大きくなることがある
洗濯物が多い 保護者の活動参加 自主運営のサポート など、家庭の負担が増える場合があります。
6. 認可外施設が多く、運営が不安定になりやすい
森のようちえんなどは園舎を持たず認可外のケースが多いです。
そのため、経済的に不安定 保育方針に差が大きい 保険や補償内容が園によって大きく異なる といった問題が起きやすくなります。
7. 活動の「正解」がわかりづらい
自由度が高いため、「どの活動が子どもの育ちに良いのか」の基準が曖昧になりやすく、
団体の理念によって質が大きく変わります。
8. 衛生面の不安
オムツを使わない園や、野草・木の実を扱う食育を行う園など、
衛生面の考え方が一般の保育園と大きく違う場合があります。
9. 送り迎えや活動の場所が負担になることも
都会に住む家庭にとっては、自然の多いフィールドへの移動、集合場所の変動など、親の負担が大きくなりがちです。
10. 成長の「見える化」が難しい
制作物や教材が少ないため、成果が目に見えず不安に感じる保護者がいます。
11. 異年齢保育の難しさ
メリットも大きい部分ですが、年下がついていけない・年上が負担を抱えやすいなど課題もあります。
12. 保育者の専門性に差が出やすい
自然保育を深く理解した保育者はまだ少なく、団体によって専門性の差が大きくなりがちです。選ぶ際のチェックポイントになります。
大切なのは
「我が家の価値観や生活スタイルと合っているか」
を基準に選ぶこと。
自然保育の良さを最大限に生かすためには、家庭と園の考え方の相性がとても重要です。
体験談 家庭間の熱量の差

うちの娘たちにも自然の中での活動を経験させてあげようと、認可外「自然保育団体」に参加していました。
素晴らしい自然環境の中で遊ぶ貴重な体験。普段見せないような笑顔で活きいきと遊んで、仲の良い友達もできたところでした。
その団体は、通っている子供達の親が中心に運営をおこなっており、行事の企画や準備なども親主導で進んでいきます。
週4回の活動が基本になっていて、年少にあがるタイミングから、親子共にフルタイムでの参加が望ましいと言われていました。
しかし、長女は別のこども園に通っており。園での生活や友達関係もとても大切にしていたので、しばらくは不定期な参加をさせてもらっていたのですが、ある時「こちらにはカリキュラムがあって、中途半端な参加では全体に良い影響が出ないから、ちゃんと通うのか辞めるのかハッキリしてほしい!」と判断を迫られ、結局もとのこども園を選択、自然保育活動には参加できなくなってしまいました。
そこで感じたのは、運営の中心になっている親御さん達と、普段経験できない自然体験の場を与えてあげるのが目的だった、我々との間の熱量の差です。
みなさんフルコミットで 100% の活動しているのに対し、我々はそこまでの力は注げない…。そこに、溝ができてしまっていたんです。
素晴らしい環境だっただけにとても残念だし、何よりお友達になった子たちと別れなくては行けなくなった長女のことを思うと申し訳ない気持ちになります。
団体選びは“家庭の価値観と生活リズム”がすべて

自然保育の団体を選ぶときに大事なのは
「家庭が何を大切にしたいか」と「どんな生活リズムで過ごしているか」です。
長時間の親参加型が合うのか?週1〜2回のサークル活動で十分なのか?
働き方や移動距離、預けられるかどうか?そして子どもの性格まで含め、家庭ごとの“ちょうどよさ”が最適な団体を決めていきます。
親の価値観
自然保育をどれくらい生活の中心に置きたいかは、団体選びの大きな軸になります。
自然との触れ合いを最重要視する家庭なら、フルコミットできる長時間の親参加型や、自然保育認可園への登園。
普段の生活の補完としての参加ならば、週1〜2回のサークル型が向いています。
自然体験には“週あたり200〜300分で最大効果が得られる”という研究もあり、頻度の判断材料にもなります。
また、ケガや虫刺され、生き物による獣害、木の実など自然食のリスクをどこまで許容できるかも、家庭ごとに違う大切なポイントです。
生活のリズム
共働きで時間が取りづらい家庭と、子どもとの活動を生活の軸にしたい家庭では合う団体が変わります。
預けられる体制があるか?
家からの距離はどうか?
参加できる曜日・時間帯は現実的か?
さらに、親自身が活動に関わりたいのか、仲間と一緒に場づくりしたいのかも重要です。
“続けやすいかどうか”が、子どもの体験の質にも直結します。
子どもの性格
外で泥んこになるのが大好きなタイプと、落ち着いた遊びを好むタイプでは、自然保育との相性も違います。
自然の中で刺激を楽しめる子もいれば、最初は慎重に様子を見る子もいます。
どちらが良い悪いではなく、子どもの性質に合った環境かどうかが大切です。
無理なく楽しめる場を選ぶことで、自然体験の効果がより豊かに育まれます。
まとめ

情緒面への影響、非認知能力の向上、運動能力向上などさまざまな点から、子どもにとって非常に有益な自然保育。
だからこそ、それぞれの家庭にあった活動で、できるだけ継続的に参加させてあられる事が理想です。
多くの団体が、参加体験できると思いますので一度参加してみてはいかがでしょうか。
子どもや親にとっても、無理をせず心地良く自然の中で過ごせる環境を探してみて下さいね。

